奈良にうまいもんあり

奈良にうまいもんなし『奈良にうまいもんがあるのです!』

小説好きの自分は、ぶらりとお散歩で志賀直哉旧居まで行くことがあります。

ここは、志賀直哉先生が昭和4年から9年間住んだ旧居で、「暗夜行路」はここで完結しました。近代的で、自然と平和と調和と静を愛した、文人直哉先生の人間性が偲ばれます。

さて、奈良に13年間も暮らした文豪「志賀直哉」。先生が随筆『奈良』の中で書いたとされる「奈良にうまいものなし」という言葉が有名ですが、正確には「食ひものはうまい物のない所だ」でした。もとの文章を読んでみると、先生の奈良への愛情がひしひしと伝わってきます。奈良に関するエッセイなどから抜粋してみました。

この文章は、1938年(昭和13年)に発表された随筆『奈良』からのもの。わずか4ページほどの短い文章で、奈良県観光課が発行した雑誌に寄稿したものです。県から依頼された文章に、奈良を腐すようなことを書いてしまうのもすごいですが、それが80年も経ってまだ引用されているのですから、さすが文豪ですね(笑)

ただ、志賀直哉先生の言葉は、なぜか「奈良にうまいものなし」として広まっていますが、正確には「食ひものはうまい物のない所だ」です。

『 食ひものはうまい物のない所だ。私が移つて来た五六年前は牛肉だけは大変いいのがあると思つたが、近年段々悪くなり、最近、又少しよくなった。此所では菓子が比較的ましなのではないかと思ふ。蕨粉(わらびこ)といふものがあり、実は馬鈴薯の粉に多少の蕨粉を入れたものだと云ふ事だが、送つてやると、大概喜ばれる。豆腐、雁擬(がんもどき)の評判もいい。私の住んでゐる近くに小さな豆腐屋があり、其所(そこ)の年寄の作る豆腐が東京、大阪の豆腐好きの友達に大変評判がいい。私は豆腐を余り好かぬので分からないが、豆腐好きは、よくそれを云ふ。

志賀直哉『奈良』(「志賀直哉全集〈第6巻〉沓掛にて 豊年虫」より) 』

この段落を読むだけでも、かなり印象は違ってくるでしょう。

志賀直哉先生は、いろんなところに「土地は関西の方が好きだが、人は関東の方が好きだ」という意味のことを書いていますので、地元の人たちとの付き合いがそれほどしっくりいっていなかったようですが、決して奈良の人や食べ物を一方的に腐しているわけではありません。

「派手な名物は見当たらないが、蕨粉や豆腐など、美味いものもある」

こんなニュアンスで述べているように思います。正直なところ、現在でもこうした傾向はあると思いますから、心して受け止めるべきなのかもしれませんね。

奈良の高畑に行かれましたらこちらにも行かれると面白いですよ。

(志賀直哉旧居)



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